空を祈る紙ヒコーキ


 一軒家に挟まれた緩い坂道を十分くらい歩いた。整った道で歩きやすい。高台に着くまでの間、ランニングをしているおじさんや犬の散歩をしている主婦とすれ違った。人の家の花壇から花の甘い匂いがした。

 高台から見下ろす街並みはこんなにも色があったんだと感心するほど綺麗だった。ちょうど桜が満開の時期で、街のあちこちに桃色が分散しているせいかもしれない。美しいという言葉はこういう時のためにあるんだと思った。

 初めて登った高台にはベンチが二つと一人分の水飲み場があるだけだった。木も屋根もない。距離的には家から近いのに、わざわざ来ようと思ったことはなかった。

「こんなとこあったんだ」

 一瞬色んなことを忘れてしまう。空がそばにいることすら頭からなくなりそうになった。

「涼、見て!」

 振り返ると小さな虹が出ていた。

「な、何やってるの!?」

「綺麗だろ?」

 空が作った虹だった。

 水飲み場の蛇口を最大限に回し噴射口をわざと手で覆い水しぶきを作る。

「晴天の日だからやれるんだ、すごいだろ!」

 空は得意げだった。

「なっ、何してんの、バカなの!?」

 呆れを通り越して私も笑顔になった。本当にバカだし小さな子供みたい。そう思うのに顔はほころんでいく。