「空は変だね。無意味に優しい」
「涼にとっては無意味でも俺にとっては充分意味あるから」
私のひねくれ発言をたいして気にする様子もなく空は平然としていた。
「傷ついてる人を助けるのに損も得もないよ。助けたい。ただそれだけ」
「……私には理解できないな」
「理解できないと思い込んでるだけかもよ」
「そうかなー」
典型的善人みたいな空の思考回路。私にはやっぱり理解できない。人間みんな自分が一番可愛いに決まってる。
空の前向きさに首を傾げる私を見て、空はまっすぐな目を向けてきた。濁りのない綺麗な色をしているのに、やっぱりどこか翳るその瞳。
「だって涼、今日話してた子のこと母さんに悪く言われた時真っ先にかばってたじゃん。そういう感情に損得とかないでしょ? 俺のもそれと同じ」
そうかもしれない。
お母さんに愛大のことを悪く言われるのが嫌だった。お母さんに言い返した時はその気持ち一色で自分にとって損とか得とか考えてなかった。お母さんが愛大を悪く言うことで、今日愛大と過ごした私の気持ちまで否定されたような気がして悔しくもあった。
誰かのためにあそこまで感情的になれることが信じられないけど嬉しかった。裏サイトを通じて陰湿なことばかりしていた私には縁のない経験だと諦めていたから。
空といると知らなかった自分が出てくる。
変わりゆくこの心を後押しするかのように、空は住宅街の向こうに見える芝生の高台を指差した。
「綺麗な景色、見に行こ」

