空を祈る紙ヒコーキ


 せっかく食べたお寿司の余韻が消え、店側に罪はないのにこのままだとこの店にまで嫌な印象を残してしまいそう。そう思った時だった。

「それは言い過ぎだよ、母さん。涼が傷つく」

 空がお母さんに言った。

「それに一人の友達と仲良くするのは悪いことじゃないよ。学校にはたくさん人がいるけど親友って呼べる人に出会える確率なんてホント低くて、もしかしたら一生そんな相手には巡り会えないんじゃないかってくらい奇跡的な関係なんだ。アミルちゃんと知り合えた涼はすごいよ」

 実感のこもった話し方だった。

 空の解釈は間違ってる。アミルは親友なんかじゃない。それに空の話す親友論(?)は聞く方が恥ずかしくなるほどくさかった。けど、それでも、空の言葉はとても嬉しかった。何より、私が傷ついたことを真っ先に察しそれ以上傷が広がらないようにしてくれた。

 その後結局お母さんは場の空気を変えるようにビールを注文し、空の言葉にまともな返事はしなかった。義理の息子とはいえ年下の他人に反論され気まずかったんだろう。言い返すのも大人気ない、と、体裁を気にしたのかもしれない。今までは気分のまま私をいじめてこれたのにここへ来て邪魔が入り内心舌打ちしているのかもしれない。

 お寿司屋を出た後、お母さんと別の店で飲み直すと言った夏原さんはそれとなく私と空を先に帰してくれた。

 帰り道、普段より明るく見える青空を仰ぎながら空と歩いた。

「お母さんにあんなこと言ってよかったの? 空には何の得もないことなのに。むしろお母さんに睨まれて今後やりづらくなるかもしれないのに」

 さっきはありがとう。そう言いたかったのにうまく素直になれない。自分の屈折加減が初めてわずらわしいと感じた。否定的なことばかり言ってしまう。