バンドって。生徒会長って。全然聞いてない。同じ高校ってこともさっき初めて知ったばかりだし。それにE組は特進科だから普通科より頭いいんじゃなかったっけ。アイツ勉強とかホントにできるの? イメージできない。

 一週間以上同じ家に住んでいたのに、仮にも家族なのに、空のことを何も知らなかった。空は私を気にかけてくれたけどそれだけ。そのことを改めて思い知り何となくショックだった。

 新しい家で空と話し、人と話すのも悪くないと思えた。そんな風に感じていたのは私だけだったんだ。

『俺のことを好きにならないで』

 ……そうだ。ショックを受ける方が間違っている。一番初めに釘を刺されていたんだから。空のことに特別関心を持ったらいけない。

 私は義理の妹。それ以上でも以下でもない。言葉にされなくてもそう言われた。今日この場で。

 言われなくても深入りなんてしないし。アイツもしょせん他人だ。本当の兄じゃない。

 空との間に分厚い壁を作るみたく、何度も自分にそう言い聞かせた。


 入学式が終わると各自教室に戻り、ホームルームが行われた。担任教師に今後の学校生活の説明をされているうちに帰宅時間がやってきた。

 入学式は一応保護者も参加する決まりだけど強制ではないため、親同伴じゃない生徒も多かった。私も呼んでいない。

 帰りのチャイムが鳴るとすぐに愛大がやってきて、自分のスマホをこっちに見せてきた。画面には私のツイッターのプロフィールが表示されている。

「それ……!」
 
「涼のことフォローしといた。アタシも実名アカウントだから分かると思う。気が向いたらでいいからフォロバよろしく!」