私より前に並んでいる愛大がこっちを振り向き小さく手を振ってくる。それに小さく笑い返したら、少しだけ鬱な気分が紛れた。
不思議な子だ。頑張らなくても自然に人を引き寄せるタイプ。私が望んでも手に入らないスキル。
愛大は何で私なんかに話しかけてきたんだろう。入学した日に話しかけるのはその人と一年間絡むことになってもいいというアピールみたいなもの。彼女みたいなタイプは自分と同じようなタイプを好みそうなのに、お世辞にも明るいとは言えない私に絡む理由が見当たらない。
むしろ私は暗い。表でいい顔をしながら嫌いな人の悪口を学校裏サイトに書き込むような人間だ。愛大は絶対そんなことはしないだろう。
考えているうちに校長の退屈な挨拶が終わった。校長と入れ替わりに上級生が壇上に上がってきた。すると整列している上級生の方がざわついたので、そんなに騒ぐほどの人なのかと思い、私も顔を上げて壇上の上級生を見た。
え……!?
その人を見て思わず目を見開いた。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。今年度から生徒会長に就任しました、三年の夏原空です」
どうして空がこの学校に……!?
そういえば、今朝私が起きた時にはもう、空は家を出た後だった。憂鬱な気分で朝食を摂る私を見やり、夏原さんとお母さんはニヤニヤしていた。新婚で浮かれてるのかと思っていたけど、なるほど、こういうことだったんだ!
空も空だ。ここの生徒であることを私に黙っていたなんて、家族ぐるみで何てやつらだ。

