「呼び方なんて関係ないから。無理するなよ」

 二階の廊下で二人きりになった時、空はフォローするようにそう言ってきた。

 何でそんなに私のことを気にかけてくれるのか分からない。家族になったとはいえ、空のかまい方は少しおおげさな気もする。空がそんな風になるのは、私が引っ越し早々お母さんとケンカしたせい?


 入学式の日、憂鬱な夢を見て目が覚めた。起きた瞬間内容は忘れたけど学校に行く気がますます失せた。でも休むわけにはいかない。

 ランク面での不満を感じつつ、これから行く高校で孤立したくない。入学式から休んだら友達すら作れなくなりそう。

 不本意な気分で行くことになった高校でも、一緒にお弁当を食べたり移動教室できる友達は作っておいた方がいい。昔みたいに嫌がらせを受けないために。

 そう思い、春休みが始まってすぐツイッターの実名アカウントを作り顔写真を載せ、必死に音羽台高校の人を探した。音羽台高校は四月から通う私立校の名前。

 ツイッターでは何人かの音羽台新入生が私と同じように積極的に友達探しをしていた。

 新生活、同じ教室になった初対面の人に話しかけたり友達になるキッカケ作りが苦手、そういう手間が面倒だと感じた私達は、入学前にあらかじめ友達になっておくことで一人の学校生活を回避しようとしていた。

 一人になりたくない。その気持ちは皆同じなんだ。