「子供は無力だよな。親の事情に巻き込まれるしかなくてさ。嫌だからって逆らうこともできない。それが悔しくてもどかしくて、だから涼はツンツンしてるんだろ?」
「だったら何?」
「そういうことできるならまだ大丈夫。心は健康な証だから。よかった」
「……?」
意味が分からない。どうしていきなりそんな話をしてくるんだろう?
私の疑問を察したように意味深な笑みを浮かべたものの、空はそれ以上説明などせず、別の話をし始めた。
「留守番、涼のためってより俺のためなんだ」
「どういうこと?」
「父さんと暮らしてた頃、一人で飯食べるのが当たり前だった。三歳の時に母さんは病気で死んだんだけど、母さんと過ごした記憶は全然なくて」
「そうだったんだ……」
父子家庭なのは言われなくても何となく分かっていたけど、空も母親がいないんだ。離婚以来会ってないけどその気になれば会うことができる私の父と違って、空の場合は死んでいるからもう会えない。
「その分、一人の夜は色々想像したよ。母さんの手料理ってどんな風だったんだろーとか、父さんと母さんは結婚前どんなとこに出かけてたのかなーとか。それで寂しさを紛らわしてた」
「アンタみたいな人でも寂しいとか思うんだ」
こんなことしか言えなかった。
「当たり前。一人の飯は寂しいよ。美味しい物食べてるはずなのに味気なくて。量的には多いのにどれだけ食べても腹が満たされないってこともあった」

