「涼もよろしくな」
「どーも」
愛想良く挨拶をしてくる空に、私はうまく返せなかった。先日あんなことがあったのに、空は全く気にしていないみたいだ。
「相変わらずそっけないな」
「言いましたよね? 仲良くするつもりないんで。いつ離婚するか分からないし」
「それはないと思うよ。父さん、高取さんのこと大好きだから」
「ふーん。どうだか」
空の言葉をスルーし、私も玄関で靴を脱いだ。
「涼、早く来なさーい! 夏原さんにご挨拶するのよ」
お母さんに呼ばれ返事をした。
嫌だな。夏原って人と会いたくない。一気に憂鬱になった。
「大丈夫だよ。父さん家族が増えるの楽しみにしてたから」
私の気持ちを見抜いたみたいなタイミングでそんなことを言ってくる空にドキッとした。やっぱり変なヤツ。
「別にこっちは楽しみじゃないし」
目を合わせずそう言い、お母さん達のいる方へ向かった。空もついてきた。
「初めまして。夏原です。よろしくね、涼ちゃん」
夏原さんを見て、父とは全然違うタイプだなと思った。紳士的で落ち着いていて、だけどどこかたくましい、そんな人。経営者というからいかにもなおじさんを想像したけど夏原さんは青年と言っても違和感ないほど若々しかった。

