無料のライブだからか、ネットに動画を載せている効果なのか、観客席はほぼ満席だ。音羽台の生徒が大半だけど、中には時間を作ってくれた校長先生や各教科の担当教師陣、愛大の中学時代の同級生や幼なじみも来ている。この日のことは私達メンバーがあらかじめ連日ツイッターで宣伝していた。
そして今日この場所にお母さんや暁、夏原さんを招いている。再婚同士だからと親戚に遠慮し二人は結婚式を挙げなかった。それでも結婚をちゃんと祝ってあげたいという空と私の意見が一致し、お祝いの意味を込めて家族を呼んだ。残念ながら愛大の親は仕事で来れなかったけど、仕事を抜けてここへ駆けつけた里子さんがビデオを撮ってくれるそうなので親には後でそれを見せると愛大ははりきっていた。
今日のライブではオリジナル曲を十曲披露するつもりだ。メインはもちろん宝来君の命日に捧げるあの曲だけど、お母さん達に贈るウェディングソングもしっかり用意してある。
このライブ会場は愛大の親が管理している場所らしく、愛大もかつてここでラズベリーのライブをやったそうだ。
愛大と共にステージ上からライブ前の会場を眺めた。
「ラズベリー最後のライブ、ここでやったんだ。だからつらくなるかと思ったけどもう平気。過去を生かしてこれからも音楽で生きていく。アタシそう決めたよ。だからここでプレジャーディレクションの初ライブができて本当に嬉しい」
「愛大……」
この瞬間、愛大は本格的にアーティストを目指すと決めた。
「盛り上げてこーね! 宝来君と歩君に届くように」
「うん! 精一杯歌うよ」
ツイッターのアカウントをユーザー全員に見える設定にしていた歩君にも私のアカウントからコメントを送り今日のことを知らせた。返事はなかった。住んでいる場所も遠いし心境的な面で歩君は来ないかもしれないけど、目は通してくれていると思いたい。

