「欠けた空ごと好きだから。幸せになる心を捨てないで! 空の穴は私が埋める。だから私の穴は空が埋めてよ」
「そうですよ。楽しい時だけそばにいる関係なんて本当のバンド魂じゃないです」
腕で涙を拭い、それでもまた新たに涙を流し、空は私達を見つめた。大人だと思っていたのにその目は幼い子供のように無垢だった。赤ちゃんが無条件に母親を信頼するかのように心から私達を信じ求める瞳。いつしか空の心に募った感情の垢が今まさに取り払われているのかもしれない。
「まだまだ練習する時間はたくさんある。宝来君の命日にライブしようよ。その詩を曲にして、私達三人で天国の宝来君に届けるの」
「俺は本当に二人の手を取ってもいいの?」
「当たり前だよ」
私と愛大は立ち上がり、座ってこちらを見上げる空に右手を差し出した。
「この手を取ってほしい。空に」
「生徒会長のためだけじゃないよ。アタシもちゃんと前に進みたいから」
一蓮托生。どんな未来が待っていても私達は解散の日まで空と運命を共にすると決めた。ううん、解散後もずっとーー。
それから二ヶ月後。
八月も残るところわずかとなった晴天の日。宝来君の命日はライブ日和で、気持ちの良い青空が広がっていた。市内の野外ホールでプレジャーディレクションは初めてのライブを決行した。
規模は小さいけれどアマチュアバンドがライブをするには贅沢すぎる場所だった。音響機器もそろっているし、キーボードやギターの調子も整っている。階段のようなコンクリート製の観覧席が五列、芝生の広場を挟んでステージの前方を囲んでいる。全部で二百席はあるだろうか。

