空を祈る紙ヒコーキ


 それきり何も言えずうつむく私に、お母さんはあっけらかんと言った。

「そんなに嫌? もっと喜んでくれると思ったのに。暁はお兄ちゃんができるって喜んでたのよ?」

「そうやって何でもかんでも暁と比べないでよ……!」

 強く言い返し自分の部屋にこもった。

 再婚なんて認めない。血のつながらない兄なんていらない。新しい家族なんていらない。そんなもの、どうせすぐに壊れるんだから……。


 その日以来勉強に集中できなくなり、その代りに離婚する前の親の姿をしょっちゅう思い出すようになった。

 おかずの少ない食卓。欲しい物も買ってもらえずクラスメイトから笑われる日々。一日おきに同じ服を着ていったせいで男子からからかわれることもしょっちゅうあった。素直な暁と比較される毎日。父の怒鳴り声。

 もう嫌だ。あんな思いはしたくない!

 二歳上の兄になる人もきっと、私と暁を比べて暁ばかり可愛がるに違いない。夏原って人もそう。新しい家庭で私はまたひとりぼっちになる。誰も信じられないーー!


 それから、来る日も来る日も再婚後の生活に悪いイメージを膨らませ、夜眠れないことが増えた。

 当然勉強にも集中できなくなり、その分成績が落ちた。それでも受験に臨んだ。結果は散々だった。

 どこまでも親に振り回される。私の人生って何だろう……。頑張っても成果が出ず報われない……。

 落ち込みと苛立ちと将来への不安がないまぜになった。