数年前の私なら宝来君の言葉に心から共感しただろうし今でも否定する気はない。誰だって一度は自分の価値を考え後ろ向きな思考になることがある。でも今は空の気持ちも理解できる。前までは分からなかったけど今の私にはよく分かる。もし愛大がそんなマイナスなことを言ってきたら叱咤激励の意味を込めて空が宝来君に言ったのと同じようなことを私も言うと思う。それくらい友達の命は大切だ。
死ぬ直前、気を病んでいた宝来君は歩君にこう言ったそうだ。
『空にも嫌われた。俺がこんなんだからだよ。もう生きていくの疲れた。いいことない……』
歩君が空ばかりを執拗に責めるのはそれが原因だった。最初そのことを歩君に責められた時、空もそんなつもりはなかったと主張したが、そんなつもりがなくても追いつめたのはお前だと歩君に言い返されて何も言えなかった。その後は歩君の言葉が正しいと思い、ツイッターでの暴言や非難もただひたすら受け入れてきた。
「それだけじゃない」
絞り出すように声を出し、空は顔面を歪めた。
「おばさんから訃報を受けた時、宝来の死亡推定時刻を聞いた。その頃俺は友達んちでゲームしながらゲラゲラ笑ってた。何も知らずにのうのうと……!」
両手で頭を抱えて空は泣きじゃくった。
「俺は自分が赦せない。歩が俺を責めるのは当然なんだ。歩だって大切な兄弟を失ってきっと今もずっと泣いてる。宝来の一番近くにいたのに俺はアイツを見放した。助けられる命だったかもしれないのに! 俺があんなことを言わなければ宝来は今でも生きていたかもしれない……。俺が殺したんだ。俺が……」
「傷つくのはもうやめて!」
私は空を横から抱きしめた。私の背中越しに愛大も空に両腕を伸ばした。空の体は小さく震えていた。

