「そうだね。言うヤツじゃなかった。中学に入って色々見えてきたんだよ。子供の頃には分からなかったことがさ」
「いなくなっていい人間なんていない。皆そう。あの人もあの人もその人も、誰かの大切な人なんだ。俺はそう思う」
空は手当たり次第に周囲の人を指差した。見知らぬ人にそんなことをするのは非常識で失礼なことなんだけど、そういうことまで気が回らないほど宝来君の言葉に動揺した。無意識のうちに力がこもる空の言葉を耳にしても、宝来君の瞳の色は冷めたままだった。まるで自分の言葉を拒否するかのような宝来君の反応が悲しくて空は言った。
「そんなこと言うお前なんて嫌いだ」
そこでちょうど新幹線がやってきて宝来君と別れなければならなくなった。こんな雰囲気のままさよならなんてしたくなかったが、夏原さんが車で地元の駅まで迎えに行くとメールを送ってきたので時間通りこの新幹線で帰らなければならない。後ろ髪を引かれる思いで、空は乗車口から宝来君を振り返った。
「あっち着いたらLINEする。宝来も家まで気をつけてな」
「変なこと言ってごめんね。空、バイバイ」
「もういいよ。気にしてないから。またな!」
その〝また〟は二度と来なかった。
LINEで帰宅したことを告げても宝来君からの返事は来ず、その三日後、彼は自ら命を絶った。
「少し考えたら察せることだったのに、アイツの苦しみをちっとも理解しようとしないで、それどころか一番つらかった時にあんな突き放すようなを言ってしまったんだ……」
「だってそれは仕方ないよ! 空も宝来君のイジメのこと知らなかったし、急にそんなこと言われたら誰だってそうなるよ。大事な友達にそんなこと言われたらなおさら……」

