空を祈る紙ヒコーキ


「ねえ、涼。せっかくだし生徒会長に詩を書こうよ」

 暁にもらった便箋を二人して見つめた。

「だって、アタシ達はプレジャーディレクションだから。想いは詩で。ね?」

「うん、そうだね。いいアイデアだよ!」

 そうだった。今の私達には伝える手段がある。音楽を奏でる時間を共有した間柄だ。普通に言葉をかけたってダメかもしれないけど、詩ならきっと空も受け止めてくれる。


 目的地に着いた。

 宝来君が引っ越す前、宝来君と空が通っていた小学校。夜なので怪談を意識しこわくなるかと思ったけど、月の光が反射してキラキラ光るプールの水面を見つめている空を見つけた瞬間、こわさは吹き飛んでいった。

 今年も暑い。小学校ではすでに水泳の授業が始まっているらしく、六月下旬だというのにプールの水は入れ替えられ夜でも綺麗なのが分かった。

 飛び込み台に腰を下ろして水面を見つめる空は、考え事をしているらしく私達が近付いていることにも気付かない。プールに入るため鉄製フェンスを乗り越えた瞬間カシャカシャンと軽快な音が鳴り、そこでやっと空は私達の侵入に気がついた。

「どうしてここが?」

 そう言いつつ空はあまり驚いてないみたいだった。私達を拒否するように目を伏せている。

「ああ、父さんか……」

「せーの!」

 私と愛大はひとつの紙ヒコーキの羽根を両側からつまみ、空に向かって飛ばした。タクシーで書いてヒコーキ型に折った二人分の詩。