空を祈る紙ヒコーキ


「お兄ちゃんきっとお姉ちゃん達のこと待ってるよ」

 暁は走って自室に駆け込むと何かを手にしてすぐに戻ってきた。ヒコーキ雲の模様が書かれた一枚の便箋。水色を基調とした紙面には真っ白なヒコーキ雲のイラストが描かれていた。空にもらった物らしい。

「お兄ちゃんが言ってた。願い事を紙飛行機に書いて飛ばすと叶うんだって。だから使って」

 便箋と一緒にしっかりペンまで渡してきた暁はやっぱりこんな時にも賢いんだなと、少し悔しくなる。

「生意気! でもありがと」

 暁の頭を軽く小突くと、お母さんがラップの包みを二つ渡してきた。暁と話している間に用意したみたいだ。

「冷凍食品で悪いけど焼きおにぎり。二人分あるからタクシーの中で食べなさい。夜ご飯どうせまだなんでしょ」

「お母さん……」

 冷凍食品でも嬉しかった。今まで私のためにお弁当なんて作りたがらなかった人なのに。緊急時の一時的な優しさかもしれないけど充分だった。空に会う勇気をもらった。


 玄関先まで来て見送ってくれる三人に手を振り、私と愛大はタクシーに乗り込んだ。夏原さんが指定した行き先まではけっこう距離がある。気持ちが昂ぶる一方だったのでしばらく無駄話をした。空の居場所が分からないと焦る気持ちはだいぶ落ち着いたものの、これから空と話すことを想像すると不安と期待で興奮した。

 夏原さんの期待通り、私達は空を本来の空にすることができる? もちろんそのつもりだけど、どうしたら空を癒せる?