だから歩君は空にあんなメッセージを送ってきたんだ。裏切られたと思って。
「空は自分を責め続けている。宝来君を失った悲しみもまだ癒えていない。そういうことはやめてほしいと、私も歩君に何度か電話でお願いしたことがある。それでもダメだった……」
語る言葉が重なるたび、夏原さんの目に涙が溢れてくる。
「もう苦しんでほしくない。親としてやれるだけのことはしてきたしこれからもそうしたいと思っている。私は宝来君の親御さんや歩君にどけだけだって嫌われてもいい。それで空を守れるのなら。でももう、私が何をしてもダメなんだ……」
「そんなことないですよ……」
愛大は気遣わしげな表情で夏原さんに声をかけた。私は何も言えなかった。夏原さんの愛情はいつも目に見えて空に向かっていた。私達だって空の心境を想像すると苦しいのだから、父親の夏原さんはもっとつらいはず。宝来君の親も空が悪いわけではないと分かっているだろうけど、昔仲が良かった家族として歩君と空の関係悪化に何か思うこともあるだろう。
「いや、本当にもう、私から空にしてあげられることが何も見つからない……。それを証拠に、宝来君の死の真相を知らされた直後から空は若年性健忘症を患った。本人には伏せてあるけど、それは今も治っていない」
とうとう夏原さんの両目から大粒の涙がこぼれた。
「生きているのに空の目には感情の死骸が浮かんでいるみたいだ。あんな風になるために生まれてきたわけじゃないのに……!」
夏原さんの話を聞いてようやく分かった。空が記憶を失くすタイミング。それは決まってイジメに関するキーワードに触れた時だった。私がネカフェで悪口を書き込んでいたこと、高台でおもちゃを取り上げられていた幼い子供、私が過去に受けた嫌がらせの話。
愛大もそれが分かったみたいで私に小さく目配せした。空にとって誰かがつらい目にあっている様子は宝来君のことを思い起こしてつらくなる、強烈なストレスだったんだ。

