空を祈る紙ヒコーキ


 あんなに勉強して塾にも通ったのにどうして志望校に落ちてしまったのか。理由はひとつしか考えられなかった。

 お母さんの再婚話。

 夏休み、ネットカフェで変な男と会った後のことだった。あの日私が家に帰るなり、お母さんは晴れ晴れした顔で玄関まで来て私を出迎え、真剣に付き合っている人がいると告げた。

「おめでとう。って、わざわざ報告してくるの珍しいね」

 離婚後お母さんは何人かの人と付き合っていたみたいだけどいちいち報告はされなかったので不思議に思った。

「そうだけど今までとは少し違うのよ。その人と結婚することにしたの」

「は!? 結婚!? 嘘でしょ?」

 父と離婚した時、お母さんは二度と再婚しないと言っていた。私には結婚生活が合わない、とも。

「本当よ」

 お母さんの再婚相手は夏原(なつはら)さんという自営業者で、飲食店を何店舗か出しているなかなかのやり手らしい。

「夏原さんには一人息子がいるのよ。今高校二年生だっていうから涼とは二歳差ね。一緒に住むようになったら仲良くするのよ」

「そんなこと言われても! 突然すぎて話についていけない。私受験生だよ?」

「大丈夫よ。夏原さんはとても理解のある人でね、入籍も一緒に住むのも涼の受験が終わってからでいいって言ってた」

「そんな……」

「そういうことだから涼もそのつもりでいなさいね。今のうちから荷物とか要らない物の整理はしておきなさいよ」

 いくら反対しても聞いてくれない。お母さんは昔から私の話など聞きはしない。分かってた。分かってたけど……。