私達同様、ラズベリーも愛大宅の練習部屋で演奏をすることが多かった。そういう環境の中、愛大宅にはメンバーの彼氏や友達などもしょっちゅう出入りしていた。愛大はメンバーの彼氏とも普通に話していて、そのうち好意を持たれるようになってしまった。他のメンバーも愛大と同じようにしていたし、愛大はその子の彼氏にだけ甘い接し方をしたということもなかった。
「だからショックだったよ。まさかそんなことになるなんて……。大切なメンバーの彼氏と仲良くするのも礼儀だと思ってた。彼氏もせっかく練習部屋を覗きに来てくれたしこっちは付き合ってる二人が会うはずの時間を削ってもらって練習の時間もらってるんだから彼氏側に雑な対応するなんて失礼だと思ったし。でも、そのことがあってから人の彼氏とは仲良くしたらダメなんだって学んだ。たとえ友達の彼氏でも……」
その点、高校で組んだプレジャーディレクションはそのリスクがなかった。なぜなら私と空は兄妹で、愛大もそう信じていたから。
「自分の存在が友達を傷つけるのはもう嫌だった。だから軽音楽部に入るのも最初は悩んだの。自分がモテるだなんてちっとも思わないけど、今度は逆のパターンだってあるかもしれない。メンバーの彼氏をアタシが好きになってしまうかもしれない。恋愛目当てでバンド始めたわけじゃないけど、好きになる気持ちって本人にはどうしようもないってことも分かるし。現に一度身近で体験したからさ……」
「そういうことだったんだ……」
愛大が軽音楽部を訪ねようと言い出したのはとても中途半端な時期だった。
「でも、涼を誘ってよかったって今は心から思ってる。涼や生徒会長は兄妹だから恋愛絡みのゴタゴタでメンバーの絆に亀裂が入ることもない。そういう意味でもプレジャーディレクションにいるのは気が楽だったし変に遠慮せずのびのびできた。二人とは気も合うし、家の練習場所を見ても最近は平気になってきた」
ラズベリー解散直後、メンバーとの楽しかった日々を思い出し苦しくなるので、愛大は自分の家だというのにこの家の練習部屋に入ることができなかったそうだ。

