練習の時しょっちゅう来ていたのに、今日は愛大の自室に通されると変な感じがした。いつもと違うテンションだからかもしれない。部屋の主はいつも通りで、愛大は高級カップアイスを二つ出してきた。前に私が好きだと言っていた物だ。気を遣わせてしまった。なんとなく落ち込む。
私がアイスを受け取るのを見届けてすぐ愛大はエアコンのリモコンでクーラーをつけた。
「あんま歩いてないのにもう暑いよね。あ、寝る時服かすから大丈夫だよ」
「ごめん。今日は何も用意してない」
「いいって。いきなり誘ったんだしそんなこと気にしないのー」
部活を休むのは罪悪感もあったし今は人と楽しく話せる気分でもないのに結局愛大の誘いに乗ってしまった。私が話を聞いてほしいというより、愛大が話したいと言っていたことの方が気になった。
アイスをふたくち食べたところで愛大の話が何なのか訊こうとしたら、彼女の方から話を切り出してきた。
「アタシ、今のメンバーなら楽しくやっていけると思ってるんだ。生徒会長が引退するまでずっと」
「そういえば前のバンドは卒業と同時に解散したんだったね」
「うん。卒業をキッカケにラズベリーは皆バンドをやめてった。……っていうのは嘘。本当は卒業が原因じゃなくてメンバーの雰囲気が悪くなったから解散することにしたの。それがたまたま卒業の時期ととかぶっただけ。全部アタシのせい」
愛大がいた『ラズベリー』は女子だけのグループで、最初は愛大を含めた幼なじみ三人で結成していたけど途中から二人のクラスメイトがメンバー入りし、最終的に五人組のガールズバンドになった。
「こんなこと人に話すの初めてなんだけどさ……。後で入ってきた二人のうちの一人がアタシを嫌うようになった。それが発端。その子の彼氏がアタシのこと好きになったから。幼なじみの二人はアタシは悪くないって味方をしてくれたけど、彼氏に心変わりされた子はそう思わないよね。それからもうメンバーの間には不穏な空気しか流れなくなって……。顔合わせるたびアタシはその子に悪口を言われて、メンバー間も険悪になっていった……」

