空を祈る紙ヒコーキ


 ひたすら黙る私を見兼ねて、愛大が手のひらを大きく叩いた。

「今日はもう部活休みにしよ! 生徒会長には残ってもらってアタシ達は帰るの。決まり!」

「でもまだ詩が途中だし、新しい曲も作れてない……」

「作詞家がまいってる時に新曲のことなんか考えてられないよ。アタシんちに泊まってって? 今日は二人だけでしゃべろ。練習もナシで」

「愛大……」

「話聞くよ。アタシも前から涼に聞いてほしいことがあったんだ」


 その後愛大は部室まで戻り自分のカバンと一緒に私のカバンも持ってきてくれた。私が空と顔を合わせなくてもすむようにしてくれたんだと思う。その間に私は靴に履き替え、昇降口でおとなしく愛大が戻ってくるのを待った。

「明日までアタシ達は部活休んでいいって。生徒会長、涼に謝っておいてほしいって言ってたよ」

「色々ごめんね。ありがと……」

 愛大からカバンを受け取ると同時に、胸ポケットに入れていたスマホが振動した。空からのLINE。

《帰ってきたら話そ。家で待ってる。傷つけてごめんな。》

 私が何に傷ついているのか知らないくせに……。謝られても困るしよけい悲しくなる。返事をせずスマホをポケットに放り込んだ。

 昨日はあんなに空のことを想えていたのに、今日は自分のことで精一杯になってしまっている。そんな自分がなにより悲しかった。

 好きなのに、好きだからこそ、大切な打ち明け話の内容を忘れられているのはつらい。どうでもいい雑談を忘れられた程度なら多少寂しくはあってもここまでショックを受けたりはしない。

 学校を出て愛大の家に着くわずかな時間、やけにセミの鳴き声が耳に響き不快だった。梅雨明けしていない六月の終わり、今日は珍しく晴れているのにちっとも嬉しくない。最近雨続きだったのに今日に限って太陽が見えるなんて、空との関係が悪くなっていく予兆のように感じてしまう。