空を祈る紙ヒコーキ


 空に受け止めてもらえたのが嬉しかった。

 中学時代、アミルとの関係や家の中であったこと、学校で嫌がらせを受けたことを空に聞いてもらった。裏サイトに書き込みをしていたことを話したらさすがにビックリしていたけど初対面の時のように軽蔑せず労わるような視線と理解の言葉を返してくれた。それだけでまたひとつ私は強くなれた。

「そうだっけ?」

 空は私の話を覚えていなかった。

「ごめん。俺そんな話聞いてた?」

 頭が真っ白になり、気付くと私は部室から飛び出していた。

「涼!? 待って!」

 愛大が追いかけてくるのが分かったけど、走るのをやめて立ち止まろうとは思えなかった。

 ひどい。勇気を出して話したことをああも簡単に忘れるなんて! 聞いているふりだけして真面目には聞いていなかったってことだ。

 ショックで絶望した。告白を断られたことはそこまで傷つかなかったけどこのことは別だ。

 気付くと校庭まで来てしまっていた。今はただ空から遠ざかりたかった。上履きのままなのを思い出し校門前で足を止めると、愛大が息切れしながら追いついてきた。

「ちょ、涼! 足速すぎ! 疲れた〜」

「ごめん……」

「どうしたの?」

「…………」

 心配してくれる愛大の気持ちはすごくよく分かる。運動が嫌いと言っていたのに部室からここまで五分も走ってきてくれた。七月を目前にし気温も湿気も高い時期だから少し動いただけで汗をかく。でも、そこまでしてくれた愛大に私は何も説明できなかった。

 愛大には空が義理の兄であることをまだ言えていない。入学当時と違って仲良くなった今なら話せるかもしれないけど、バンド活動に集中するうちに話しそびれていた。改まって話して部活の雰囲気が変わるのもこわかった。