空を祈る紙ヒコーキ


 しまった。私は何を言っているんだろう。これでは空のことが好きだと言ってしまったようなものだ! 鈍感な相手ならまだごまかせたかもしれないけど空なら確実に気付いてしまう。

 そこまでの会話、私はほとんど無意識に言葉を発していた。気楽に話せる関係で、空の気持ちを知った後だからかもしれない。それまで好意を隠していた分、完全に気が緩んでいた。

「迷惑と思われてると思ってた。涼は嬉しいの?」

「それは……」

「聞きたい」

「……好きだよ。悪い?」

 恥ずかしくて、どうしてもぶっきらぼうな言い方になる。誰かに好きだと言うのがこんなに勇気がいることだと思わなかった。頬も、体の芯も、熱い。

 口にしたことで楽になれた気がする。もう隠す必要はないんだとホッとした。でも、その後すぐ、言ってしまったことを後悔した。空は私と付き合う気はないのだから。気持ちを言ったら彼に負担をかけてしまう。

 とっさにこう付け加えた。

「でも、別に何も望んでない! 空と同じだよ。言えただけで満足っていうか。付き合うとかそういうの何も求めてないよ。ホントに」

「……涼」

「申し訳ないみたいな顔やめてくれる? これからも同じバンドでやってくんだし、お互い思ってること言えて逆によかったよ」

 そこまで言ってようやく空は安堵の表情を見せた。

「そうだな。ありがとう。ごめんな。気持ちに応えてあげられなくて」

「いいって。私も恋愛とか付き合うとかピンと来ないし。好きな人に好きになってもらえた、それだけで充分」

「……ああ。涼を好きになってよかった。俺なんかを好きになってくれてありがとう」

「そういうのやめてー? なんか一生の別れみたい。これからも楽しく音楽やろうよ。最初に部長が言ったことだよー」

「だな。そういえば俺部長だったっけ」

 やっと空は笑ってくれた。私も心から笑えた。無理はしていない。空に言ったことは本心だ。同じバンドで音楽を創って、今日のように人には言えないつらい過去を共有してくれる。それだけで充分。

 何より、こんなにあたたかく優しい気持ちを抱かせてくれた。それだけで空がそこにいてくれる意味はある。