「いいじゃん、今は暁と私がいるんだから。義理のキョウダイだけど。まあ、私はむしろひとりっ子の方が羨ましかったけどね」
「そうなの?」
「だって親の愛情独り占めできるじゃん。キョウダイいない分、ひとりっ子は欲しい物何でも買ってもらえそうだし」
前なら抑えていたこういうことも、バンド活動を通して今では素直に言えるようになっていた。
「さすがに欲しい物何でもってことはなかったけど、そうかもしれないな。親の目はいつも向けられていた感じする。だからって過保護も困るけどな」
空は苦笑し、夏原さんの親バカぶりを面白おかしく話した。母親がいないことで空に不便なおもいをさせないよう必死だったらしい。夏原さんは学校行事で必要なお弁当を重箱五段分も作ったり、授業参観で普段は着ないような高いスーツを着てきて目立っていたようだ。そういえば入学式の時も少しズレたセンスのブランドスーツを着てきていた。
ちょっと前に聞いていたらその愛されっぷりに嫉妬したかもしれないけど、今は不思議とフラットな気持ちで笑って聞けた。そういう子育ては夏原さんらしいなと思う。血の繋がらない私や暁を空と同じように可愛がってくれているのが言動からも伝わってくる。
「お母さんの再婚反対って言ったこと取り消すよ」
「涼……」
「今は夏原さんのこといい人と思ってる。さすがに父親として見れるかと言ったら微妙だけど」
再婚してからお母さんが笑顔でいる時間が増えた。それが夏原さんのおかげってことくらいは恋愛願望皆無だった私にも分かる。お母さんは私にばかり厳しいけど、前より私の顔を見てくれるようになったし話しかけてくる時の声音も明るくなった。

