「涼は何食べたい? 何でも大丈夫」
「ピザがいいな」
「りょーかい」
出前といえばピザだった。お母さんの再婚前、ウチではピザは特別な日のご褒美だった。暁は誕生日やクリスマスに食べさせてもらっていたけど、私は姉だからという理由で英検に合格した時にしか食べさせてもらえなかった。普通の人にとっては気楽なデリバリー食品かもしれないけど、貧困家庭だったウチにとっては年に数回食べられればいい贅沢なものだった。
そのことをいつの間にか空も知っていたらしい。
「ピザ、特別な時に食べてたんだって? 暁君が言ってたよ。お姉ちゃんと食べるならピザにしてあげてほしいって。涼はポテマヨ系が好きなんだろ? あとサイドメニューのアップルパイ」
「そうだけど、暁がそんなこと言ってたの?」
信じられない。要領よく可愛がってもらっていた子供がそんなことを言うなんて。いつの間にそこまで成長していたんだろう。暁は私なんかより大人かもしれない。
ここでピザ以外がいいと言うのも暁の成長に動揺したと言っているみたいで悔しいので、何も言わずピザを頼んだ。私はメニューをメモ帳に書き、それを見て空が電話をした。
宅配員を待つ間もピザが届いてからも、私達は部活中のように途切れず話をした。部活と違うのはこの場に愛大がいないことと、話の内容が学校では絶対しない家族ネタということだけだ。
「血とかじゃなくて、そういう思い出があるから姉弟の絆って強んだろうな。ひとりっ子の俺には未知の世界」
スマホで注文し終えると、空は切なそうに笑った。元々ひとりっ子だからやっぱり一度はキョウダイのいる生活に憧れたのかもしれない。

