お母さんは私の相談などまともに聞いてはくれないのに、自分のことばかり慰めてもらいたがる。自分ばかり傷ついたと主張する。そう言われればこっちは何も話せなくなる。親だからってズルいと思った。
父とお母さんは離婚すれば他人になれるし、過去のことで周りから責められることもなくなる。でも、私は違った。
お母さんの新しく見つけた新居のアパートは離婚前と同じ市内にあったので、親の離婚後も私はそれまでと同じ小学校に通い続けなければならなかった。お母さんの実家はとても遠かったし頼れる親戚なども近くにいなかった。
お金のことや仕事の関係で遠い場所に引っ越せなかったのも仕方なかったのかもしれない。それでも私はこの土地からいなくなりたいと思った。
親が離婚した後も、父のしたことはなかったことになどできず私絡みの噂として学校中に知れ渡った。
「アイツの親父はろくでなしで借金が一億くらいあったんだって。まともに働かずパチンコや競馬ばっかやってたんだって。すげえよな」
私自身どこまでが本当のことなのか分からなくなるほど、噂に尾ひれがつきまくっていた。
「ごめんね。涼ちゃんとは遊ばないようにママから言われて……」
当時いた数少ない友達は父のことが原因で離れていった。大人達の間でも私の家族は異端でつまはじきにするべき存在だったんだろう。

