平日に長時間練習できない分、休日は朝から晩まで愛大宅で盛り上がった。
愛大の家の練習部屋は練習部屋と呼ぶのが失礼なくらい広く防音壁も施してあり、プロのミュージシャンが出入りしていてもおかしくない音楽スタジオのように設備も充実していたので、部員全員、部室での練習より意欲が増した。
愛大の両親は仕事で家を空けていることが多くまだ会ったことはないけど、その代わりなのかいつも住み込み家政婦の里子(さとこ)さんという人がいた。優しく世話好きな六十代の女性で、仕事で体を動かしているからかとても元気な人だった。時々愛大が持ってくるお弁当も里子さんが作っているそうだ。
練習合間の休憩中、お菓子やケーキを持ってきてくれる里子さんを愛大が引き止め、それを四人で食べながら雑談した。私達がどんなに夜遅くまで練習していても里子さんは応援してくれ、嫌な顔ひとつ見せなかった。
来る日も来る日も私はひたすら詩を書き、それに愛大が音を付け無地の五線譜に書き写していく。その後は全員で音の確認をしつつ部分的に詩や音を変更しながら納得いく形に仕上げオリジナル曲は完成する。愛大はキーボード、空はギター、私がボーカルを務め、無音状態だった譜面の曲に命を吹き込んだ。
詩を書くのも楽しかったけど、曲が完成してからの練習はもっと楽しかった。自分の中だけにあった言葉が想像を超えた形に変わり音楽として自分の外側に放たれる。作った曲は空の友達に頼んで演奏シーンを撮影してもらい有名な動画サイトにアップした。
最初は空一人だけだった軽音楽部も、メンバーが揃いオリジナル曲をネットに公開したことで全校生徒から注目されるようになった。私と愛大もクラスの人達に色々と質問攻めされた。
「二人ともプロデビュー目指してるの?」
そう尋ねられるくらい反響は大きかった。動画サイトにも好感触なコメントが殺到し閲覧数も日に日に増えていく。
見知らぬ人にまで私達の音楽が届きそれを好きになってもらえるのは他の何事にも代えられない大きな喜びだった。プロのアーティストはこういう充実感を味わうためだけにプロを続けているのかもしれない。

