空を祈る紙ヒコーキ


「俺もその曲好き。名曲だよな。《だからわたし 考えなければならないーー》の後に続くフレーズが特に好き」

 空の言葉にドキッとした。合唱で歌った時、私も同じことを思った。私の場合、好きっていうより普段気付かなかったことを考えさせられたという方が正しいけど。

 これは私の解釈だから作詞家の本当の意図は分からないけど、『名づけられた葉』は揺れ動く人の心や人生、心を、ポプラの木の成長に喩えながら聴く人に生き方を考えさせる曲だ。

 空がいいと言った歌詞はここ。

《だからわたし 考えなければならない
誰のまねでもない
葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を
せいいっぱい緑を輝かせて
うつくしく散る法を

名づけられた葉なのだから
考えなければならない
どんなに風がつよくとも》

 どんな困難が起きても好きな生き方をしていいし、そうするのが人らしさだと言われた気がした。中学時代、家でも学校でも人の顔色ばかり伺って閉塞状態だった私にとって、この曲はどんな勧善懲悪ドラマより励みになるものだった。

 私は空にうなずいてみせた。

「私もその部分が好き。でも、好きって思うと同時に焦らされるような気持ちにもなった。このままじゃダメなんだ、って……。勉強も大事だけどそれだけじゃ自分のことを満足させられないんだって、この曲に言われた気がした」

 自分らしい生き方とは何なのかが分からず、長い間迷いの渦の中にいた。今になってやっと見つけられた気がする。私らしさを。

 愛大や空と一緒にバンド活動を楽しむ。今ここにいることで胸が弾む。それが何よりの答え。