空を祈る紙ヒコーキ


「これ飲むと緊張感が薄まるよ。飲んでみ?」

「ただのメロンソーダじゃん」

「と思うだろ? 炭酸飲むと喉が刺激されていい声が出るしリラックスできるんだよ。騙されたと思って。さ!」

 なんかうさんくさいけど空がそう言うなら信じてみてもいい。なぜか愛大には緑茶のグラスを手渡した空に疑問を感じつつも、言われた通りに飲んでみた。爽やかなメロンの風味が口に広がり、思っていたよりきつめの炭酸が喉を刺激しながら渇きを潤す。

「ホントだ。余分なものが流れて喉が軽くなった気がする」

「じゃあ涼から歌いなよ。入れてあげる」

 愛大はタブレットみたいなリモコンを手にした。

「ホント流行りとか全然分からないから学校で習った曲でもいい?」

「いいよいいよ。何て曲?」

「中学の時のなんだけど『名づけられた葉』とか。何? って感じだよね」

 恥ずかしさ満点で答えた。今日カラオケに来ることを分かっていたんだから、詩を書くのは後回しにして昨夜のうちにネットで流行りの曲を予習しておけばよかったと後悔する。

 私の後悔とは裏腹に二人は笑わず受け入れてくれた。

「知ってるー! 懐かしいなぁ。中二の時に伴奏やったよ〜。メロディー綺麗だし、初めて譜読みしながら弾いた時ドキドキしたの覚えてる」

 伴奏者の目線から愛大はそう言った。私の中学も合唱時の伴奏はピアノ経験者が任されていた。どこの学校もそういうのは同じなのかもしれない。愛大は歌詞より曲調に興味を持っていた。