空を祈る紙ヒコーキ


 グループの招待に迷わず《拒否》のボタンを選択し、スマホを両手で握りしめた。これでアミルとは終わり。中学時代の自分にいつまでも縛られていたくない。

 パソコンを開き、裏サイトのブックマークも削除した。高校に入り愛大と行動するようになってから書き込みしなくなっていた。ここが引き時。

「バイバイ」

 今までの私に告げる。

 アミルのLINEもブロックした。これでもう彼女からのメッセージは届かない。一方的に無視するなんてフェアじゃないかもしれないけど、元々対等な関係じゃなかったし別にいいや。


 翌日、気持ちが軽かった。詩をたくさん書いて自分の中身を表現したおかげかもしれないし、アミルや自分の過去に決別したおかげかもしれない。

 放課後、愛大と一緒に部室に向かい、部室にいた空と合流してカラオケボックスに向かった。駅前の新しい店でフリータイムの部屋を取る。前だったらこういう時はいつもお金の心配をしていたけど、今は夏原さんが毎月充分なおこづかいをくれる。遠慮なく使わせてもらった。

「涼とカラオケ来るの初めてだよね〜」

 部屋に入るなり愛大はテンション高く声を上げた。軽音楽部を訪ねる前から愛大には何度かカラオケに行こうと誘われていたけど、人前で歌うことに恥ずかしさを感じていた私は断り続けていた。

「ごめんね。ホントこういうの経験ないから抵抗あって」

「大丈夫! こういうのは楽しければいいの。涼も楽しも!」

 私達がそんなやり取りをしている間にドリンクバーのドリンクを人数分注いできた空は、私にメロンソーダ入りのグラスを差し出した。心なしか楽しそうな顔で。