空を祈る紙ヒコーキ


「俺は欠けてるから」

「どういう意味?」

「そのまんまの意味。足りてないの」

 足りてないって何が? 考えていると歩きが遅くなる。空は私に合わせてゆっくり歩いた。
 
「いつまでもこのままじゃいけないって思って試しに告白してくれた人と付き合ってみたこともあるけど、ダメだった。相手が俺を真剣に思ってくれてもこっちが上の空になるから、結局関係が悪くなって別れた。その子には悪いことしたと思ってるけど、こう言いながら結局は俺は自分が大事。そんな男好きになったら女の子が不幸だろ? だから涼にもそう言った」

 わざとか無意識か、空はあえて軽快に語っているみたいだけど、だからこそ彼の本音が見えてこなかった。このスペックで彼女いなかった方がありえないけど、でもやっぱり過去の彼女の話を聞くのはショックだ。彼女がいたこともそうだけど、そう話す空はどこか作り話をしているみたいな雰囲気がする。

 人に全部を見せてない。そんな感じ。

 空は面倒見がよくて優しいのに、こうやって核心に迫る話をする時は無意識に防御線を張っているみたいだ。それは私も同じだし誰でも多少そういうところはあるだろうけど、空は極端にその要素が強い気がする。考え過ぎかな……。

「ただの自惚れじゃなくて相手のことも気遣ってるってことだね」

 絡まりそうになる思考をほどくため、私はそう言った。空は否定も肯定もせず薄く笑うだけだった。

 帰りの電車の中、学校であったことや家のことなど色んなことを話した。会話は途切れなかった。でも、どれも頭に残らなかった。先日から空に対して感じる違和感みたいなものが胸の中でくすぶっていた。記憶のこと。今交わした会話の内容。