「みゆ、立ち止まらないで前にすすむよ。
翼くん、見守っててくれる?」

「俺でよければ、もちろんだよ」


泣き虫結優奈が、笑顔にもどる。


やっぱり、泣いている結優奈より、
笑っている結優奈のほうが好きだな。


「よしっ!そろそろ家に帰る?
なんか、夜ごはんいっしょに食べるって
言ってなかった?送るよ?」


俺がそう言うと、
結優奈は、うん、とうなずいて、先に歩きだす。


前を歩く結優奈のうしろ姿を見ていると、
クルッとふり返って俺のほうへもどってくる。


「?」


そして、そのまま俺とむかいあうように立つと、
背伸びをして、俺の耳もとに口を近づける。


「……──、───。
────────、───……」

「っ……」


結優奈は、自分の顔を赤く染めて、
先に走っていってしまう。


ほんと、反則……。


走っていったせいで、ずっと前に行ってしまった
結優奈のうしろ姿にむかって、俺は叫ぶ。


「“みゆ”っ!まって!」


そして、
そのあとをおいかけるように俺も走りだした。














───『……ねぇ、翼くん。
“みゆ”って呼んでも、いいよ……』









END★