廊下に出た時点で
章弘の姿は
そこになかった


曲がって
渡り廊下に行った?


はやる気持ちと
誰かに
見つかってはいけない緊張で
呼吸を整えることが
うまくできない


そう思った矢先


章弘が向かった廊下の
一つ目の角を曲がった
渡り廊下を
目指して歩く
あたしの前方から

トントンと
あきらかに
先生らしい足音が
聞こえてきた


ヤバイ!


あと少し
あと少しで
角を曲がれるのに…


廊下の突き当たりにある
階段を
先生はあがってきていた

曲がりきるより
先生があがってくる方が
早ければ
見つかってしまう


イチかバチか
あたしは走った


一瞬で上靴を脱いで
両手に持ち
体を小さく曲げて
足音を立てずに
思いっきり走った


全身の力を
逃げることに注いだ


角を曲がった
その瞬間


ぐいっ!!


痛いほどの力が
あたしの腕を
捕まえた