堕天使と呼ばれる女

「失礼します。」

未だ緊張した面持ちで、室内に足を踏み込んだ直行。


院長室の大きなデスクにある、高級な椅子に、院長は座っていた。


緊張で少し目を回しそうな気がしていたが、院長を挟んで机の前に立った。

「本日のご用は何でしょうか?」


「そうそう!それなんだよ~」


そう話し始めた院長は、思いの外、ご機嫌で、直行は逆に拍子抜けしてしまった。

そうして机の上に出された1枚のアルバム…


「君もそろそろ身を固めたらどうだね。 院内で研究にばかり没頭していては、出逢いも無いだろう…
 知り合いの娘さんで、年も近いお嬢さんがいたもんでね、君にどうかと思って来てもらったんだ。」


『これは、もしかして、もしかしなくても、み、見合いってヤツか!?』

直行は、また違った意味で緊張が始まり、鼓動がかなり早くなってきた。

あまりの予想外の急な展開で、返答に困っていると、院長は優しく付け加えた。


「まあ、焦る事は無いよ。ゆっくり考えてみたまえ。
 一度、逢ってみるのもいいかもしれん。私がセッティングするから。
 今日は、写真を持って行きたまえ。」

そう言われ、何が何だか分からぬまま、写真だけを持たされ、院長室を追い出されてしまった。