さっき頬を抓ってみたら痛かった。眠りが浅いとそうなるらしいけど……。

「ここはオレの家。お前が帰りたがっている本来の世界でもある」

リゼリアの代わりに来夢が答えてくれた。正面のソファーに堂々と座っていてふてぶてしく感じる。

私の帰りたがっている世界……。生憎、記憶が無いから出ても意味は無い。
もどかしい気持ちが私の胸に生まれた。

「誰が記憶を消したか気になるか?」

「来夢さん、いきなり聞いても駄目ですよ~」

「時間が無いから仕方ない」

時間? ああ、私は寝ているから当然だよね。

「気になるから教えて」

「その答えを待ってたぜ……お前の記憶を消したのは」

来夢の口がゆっくりと開く。



「※※※だ」


名前の部分にノイズが走る。酷いノイズだから思わず耳を塞ぐ。
リゼリアは私の表情、様子を見て来夢に目配せをする。その表情は非常に険しい。

「※※※※※、※※※※※※」

来夢がリゼリアに対して何かを指示した。だけど、それにもノイズが走っていて、私はさらに顔を顰める。

視界がホワイトアウトしていく。同時に酷い睡魔に襲われる。

「気※※け※! ラ※※は※※え※……」

意識がギリギリある時、来夢は何かを叫んだ。だけどノイズだらけで何も分からない。