「え!?何であの2人が一緒に来てる訳!?」

「白石!?一ノ瀬とは縁を切ったんじゃなかったのかよ!?」


教室に入った瞬間、驚きの声が向けられる。
席に座れば一気に囲まれた。
顔を見なくたって、心の声が教えてくれる。
皆が怒っているって事を。


「(何だよコイツ!裏切りやがって!)」

「(白石の奴……何でまたコイツと……)」

「(許さねぇ!)」


次々と溢れ出てくる怒りの感情。
それを無視しながら正輝に声を掛ける。


「ねえ、ちょっと外の空気を……」


そう言いかけた瞬間に誰かが叫ぶように言葉を放った。


「一ノ瀬は山本がカンニングをしたってでっち上げたんだぞ!?
なのに何で一ノ瀬につくんだよ!山本に悪いとは思わないのかよ!」


それを皮切りに皆は好き勝手に言いだす。
目の前でも、頭の中にも、沢山の声が響き渡った。

そんな中でたったひとつ。
皆とは違う言葉が頭に響き渡った。


「(もうやめてくれっ……)」


苦しそうなその声に目を見開いた。
聞いたことがある声。
確かこの声は……。
教室を見渡す様にグルッと視線を向ける。
そして、ある一点で止めたんだ。
そこには1人の男の子が立っていた。
少しやんちゃそうなその風貌。
このクラスの人気者と言えるポジションにいて。
そして、今回のカンニング事件の登場人物の主役の1人と言える彼。


「山本くん……?」


小さく彼の名前を呼べばその肩はピクリと揺れた気がした。
こんなに騒がしい教室で、私の声なんて紛れてしまうはずなのに。
彼にはちゃんと届いていたみたいだ。


「っ……!!」


哀しそうな瞳が私の目を捕らえた。


「(もう嫌だっ……助けてくれっ……)」


彼の悲鳴が私の頭に響き渡ったんだ。