「ただいまー……って……」


玄関の扉を開ければ、お母さんやお父さん、お兄ちゃんまでが私に駆け寄ってくる。
そうか、今日は日曜日だから皆家にいたんだ。
って言うか何で出迎えられているの私?
首を傾げていればお母さんが私の肩を掴みニヤニヤとした顔を見せてくる。


「なになに?朝帰り?」

「朝って言うかお昼だけどね」


ツッコんでいれば『そういう事じゃないわよ』ってタメ息を吐かれる。


「誰と一緒だったんだ?」

「誰って……友達だけど……」


お父さんの質問に答えれば眉間にシワが寄ってくる。
それはお父さんだけではなかった。
お兄ちゃんの顔にも同じ様にシワが寄ってくる。


「それって一ノ瀬くん?」

「え……ま、まあ……」


嘘はつきたくなくて渋々と頷けばお兄ちゃんは怖い顔で私を見てきた。
多分、心配をしてくれているのだろう。
この前も相当、心配をしてくれていたし。


「やっぱり男と!(中々やるじゃない、ポーッとしている様に見えるけど)」

「男……?(何を考えているんだコイツは)」


お母さんとお父さんの心の声が頭の中を駆け巡る。

でも、私は何処か冷静でいられた。
いつもだったら胸が張り裂けそうになるのに。

多分、正輝のお蔭だ。
キミが心の声の事を悪く言わなかったから。
寧ろ褒めてくれたから。
だから私も少し前に進めたんだ。


「正輝は親友だから。
だから大丈夫だよ」

これはお兄ちゃんに向けた言葉だった。
だから心配しないで。
それを伝えたかったんだ。


「……」


お兄ちゃんは何も言わずに背を向けてしまう。
そんなお兄ちゃんを目で追いながら決心したんだ。
何があっても正輝を信じるって。