軽く息が上がってしまっている私に対し、真澄は涼しい顔をして、「ここが部屋だ」と言った。


その部屋は、小さめの机に、鏡など、必要最低限のものが揃っている部屋だった。

確か、この着物も、この部屋から出していたような気がする。


「今日は疲れただろう、ゆっくり休め。布団はそこにあるから、好きなように使ってくれ」

「あ、ありがとうございますっ」


私がペコリと頭を下げると、真澄は言う。


「そんなに固くならなくていい。……堅苦しいのは、苦手だ」


それだけを言うと、私をその場に置いて、真澄は元来た方へと戻って行った。


私は、呆然と立ち尽くしていたが、ハッとしてから、部屋に入って、まず布団を敷いた。

泊まっているコテージを抜け出すときは、全く眠くなかったが、今は確かに眠気を感じる。


……色んなことがありすぎて、頭が追いついてないんだ。


「とりあえず今は、お言葉に甘えて、ゆっくり休ませてもらおう……」


そう呟くと同時に、私の意識は、ゆっくりと遠のいていった……。