そう言った真澄の手に握られているのは、私が昼に読んでいた、友達から借りていた、あの本だ。


「持って来ちゃってたんだ……」


私はその本を受け取ると、そっと両手で抱きしめる。

私がお礼を言うと、「構わない」と返事をしてくれた。


「あ、そういえば……」


この本を捲ってたら、ふと思い出したことがあったのだ。


「どうした」


恐らく、真澄も本が好きなのだろう。

壁にもたれかかり、楽に座って、本を開いたところだった。


「着替え終わって、こっちへ来る途中に見えたんですが……」

「なんだ?」

「家の裏って、森か何かになってるんですか?」


私がそう言うと、真澄は本をパタリと閉じた。


「そう言えば、まだ家のことを、何も説明してなかったな」


真澄は少し考えるような素振りを見せた。


「しかし、今日はもう時間が遅い。案内するのは……、日が昇ってからにしよう」


そう言うと、真澄は立ち上がる。


「ついて来い。とりあえず、部屋へ案内しよう」


それだけを言うと、スタスタと歩き出した真澄。

そんな真澄を追うようにして、私は小走りについて行った。