私は洋服を着ていたのだが、この世界では目立つと言われ、真澄の家にあった着物に着替えることに。

なぜ、女物の着物があるのか不思議に思ったが、まぁいいか、と思い、何も触れなかった。


デザインは少し古い気がする。

しかし、とても綺麗なデザインだ。


派手ではないが地味でもない。

藍色の生地に花が描かれた、これと言った特徴はないが、なんとなく惹かれるデザイン。


手入れもしっかりされていたのか、とても綺麗に保たれていた。


お婆ちゃんが、和服好きで、よく着付けを教えてもらっていたので、着物を着るのに、たいして時間はかからなかった。

帯を締め終えた私は、居間にいる真澄のもとへ、ちょこちょこと歩いて行く。


「着替えました」


着替えたら来い、と言われたので、素直に行くと、本を読んでいた真澄が、ゆっくりと顔を上げる。


「やはり、その着物は似合うな」


これは、真澄が出してくれたものだ。

これが似合うだろう、と言いながら出してくれたもの。


真澄の顔が、とても優しい物に変わったから、なんだか照れくさくなった私は、少し俯きながら、「ありがとうございます」と礼を言った。


「そういえば……」


真澄は、懐から何かを取り出した。


「あっ、それは……」

「持ってきていたことに気づいてなかっただろ。ずっと握っていたから、落としては、と思ってな」