「成熟した妖ならば、いつでも行き来はできる。しかし、お前は人間で、この世界に適応していない。そんなお前が無理やり帰ろうとすると、帰る前に死ぬ」


――帰る前に死ぬ……。


「……まだ、死にたくないです」

「だから半年後だ」


私は、何も文句は言えない。


「まぁ、そういうことだ。これから半年、よろしく頼むぞ花凛」


そう言って、真澄は形のいい唇の両端を、綺麗につり上げた。

真澄の、妖艶な笑みにドギマギしながらも、私は、しっかりと頭を下げた。


「こちらこそ……よろしくお願いします……」


この綺麗な人、いや鬼と、いきなり同じ空間で半年……だなんて……。

もともと一人っ子で、兄弟すらいない私。

ひとつ屋根の下、初対面の、しかも鬼と、一緒に暮らすだなんて、出来るのだろうか?


……できる気がしない。

不安しかない……な……。


父さんと母さんも置いてきてしまったし……。


果てしなく……不安だ……。


しかし、どうにもならない以上、腹を括るしかない。

そう思った私は、半年間、なるべく家の手伝いなど、出来ることはしようと思い、気合いを入れたのだった。