夕暮れ。

赤とオレンジの間みたいな色に染まる多目的室。



パシャっと一枚、空を撮って、今日の部活は終了。



「あのさ」

「なに」

「ユーマのにーさんって、ずるくない?」


漫画本から顔を上げて、ユーマは鼻で笑った。



「今頃気付いたのかよ」

「ユーマから見てもずるいんだぁ」

「アイツがずるくなくて誰がずるいんだよ」

「うーあー
やっぱりかぁやっぱりかぁぁ」

「つーかさ、お前のねーちゃんこそヒドくね?」

「ヒドイ?」

「言動が意味不明っつーか、理解不能?」

「そう?」

「何思ってんのか全然わかんねぇ。なんも言わねぇし」

「あー。なるほどねー」

「不満とか、嫌だとか、言わねぇんだよ。いっつもヘラヘラ笑ってて」

「そのくせ時々泣きそうにみえる?」

「・・・そう」

「うんうん。お姉ちゃんだわー。
でもこっちこそヒドイって。
あたしのこと好き?って聞いたらうんって言うの。何がいい?って言ったらミキと同じがいいって言うの。
あたし、1度もハルマの好きを聞いたことない」

「あー。兄貴、たしかにそういうとこあるわ」

「ヒドくない?ヒドイよね」

「まーなー。
でも俺だって、1度もミカの好きって聞いたことねーよ」