そうか、としか言えなかった。それ以上何も言葉が出てこなかった。
「…でもな、やっぱ特に羨ましくねえや。だって、誕生日だけじゃあ何も変わらねえもん。
年取って、だけど昨日と何も変わらねえもん」
ニッと口角を上げてそう言った弘也に、そうだなと俺は笑いかけた。
「確かに、変わらねえな」
俺も弘也も、1日ばかりじゃ何も変わらなくて。
ゆっくりと大人に変わっていくのなら、誕生日を迎えなくてもいいと思ったのだろう。
だって、誕生日を迎えたところで、大人にはなれないのだから。
だけど誕生日はちょっとしたケジメだし、きっと少なからず悔しいと思っているはずだろうが。
「あー、そろそろ、なんかな」
こぼれた声に、俺はそんなことを言うなだとか、大丈夫だとかいう声をかけることはできず。
ただ、弘也の頭を軽く小突いて、
「馬鹿、お前、勝ち逃げするつもりかよ」
逃さねえよと付け足してそう言った。
ふと驚いた顔をした弘也は、ゆるりと笑顔を浮かべると、
「勝ち逃げ、なあ…。それも、いいかもな」
なんてまんざらでもなさそうな顔をした。
…ばーか、勝ち逃げなんて、すんじゃねえよ。


