「本当のことを言えばね、弘也くんの癌は肺にまで転移していただろう。
もうね、末期だったんだ。ここに来た時点で長くないことは確かだった。
だけれどそれを本人に伝えたらどうなるだろう。長くないと伝えてしまったら。
彼は、その中でも生きる希望を見出して生きてくれるだろうか。
病は気から、ということわざは知っているだろう。
まさにそのとおりなんだ。だから、気が滅入らないように嘘をついたんだ。
私達としても、1日でも長く、彼に生きてほしいから」
そこまで言って立ち上がった先生が、これくらいしかないけどとティッシュを渡してくれる。
俺はそれを何枚か受け取って涙を拭いた。
…そっか、そうだよな。たんに期待をさせるためだけに嘘なんて言わないか。
ポカリと空いた心の穴のようなところに、悲しみがどっぷりと溜まっていく。
でも、きっと泣くのはまだ早いだろう。


