確信も持てない噂ごときでと思うのは、どうやら俺だけらしい。
目の前に立つ女子たちはまるっきりその噂を信じ込もうとしており、俺を信じる気などサラサラないと見た。
「俺が弘也を落とすわけないじゃん。誰が言ってたんだよ、そんなこと」
馬鹿だなあと言うように笑うと、女子の1人が眉間にシワをよせた。
「嘘言わないでよ。みんな言ってるんだから。真矢くんが弘也くんを落としたって」
定番の台詞にやれやれ顔をしてやる。
…“みんな”、ね。
どうせ嘘だと言われるとは分かっていたけれど、少しくらい信じる素振りを見せたらどうなのだろうか。
なにより弘也との親友という関係をきっぱり否定されているようで悲しい。
まるで、弘也を落とした俺が弘也の親友であることは認められないとでも言うようだ。
…誰に、そんなことを決める権利があるというのだろう。
「それなら、弘也本人に確認してみればいいじゃないか。“真矢くんに落とされたんですか”って。
言っとくけど、階段から落ちたのは事実だよ。肩から落ちて、すんげえ痛かった」


