きみのおと



僕はきっと、恵まれている。
本当は、ずっとわかってた。



「きっと、みんな驚くよ。千秋くん、素材いいんだから。髪で隠してもったいないって思ってたんだよね」



僕が嫌いなこの顔も。
そして、名前も。


それをいいと言ってくれる人はいる。



ただ、そのことを知ろうとしなかった。
信じようとしなかった。




「せっかくだから、張り切っちゃうよ、俺」




切り落とされていく髪。
僕の、薄暗い気持ちも切り落としていってくれているみたいだ。


軽くなって、心も浮かんで、気分も晴れて。




ああ、少しだけ僕も、前に進めるんじゃないかって。




すごく、すごく、嬉しかったんだ。