きみのおと



起こってもいないことに怯えて。
自分勝手に決めつけて。


信じることも、変わっていくことからも逃げて。




「じゃあ、思いっきりかっこよくするね!」




張り切った声の真田さんに、僕はもう一度頭を下げた。
変わりたいんだ。

しぃちゃんの隣にいても、堂々としていられるくらい。
楽しそうなあの輪の中に、少しでも入れるように。




「なんか、いいことあった?・・・あ、もしかして友だちができたとか?」




真田さんは、本当にいい人だ。
美容師特有の人当たりの良さとか、話のうまさもあるけれど、嫌みのない明るい言葉運び。
僕の事を良く知っていてくれていて、だからこそ、僕はずっとここに通い続けてる。

鏡越しに視線を合わせて頷けば、真田さんは嬉しそうに笑った。



「そっか!よかったね!こうやって反応してくれるのも、凄く嬉しいよ、俺は」




しみじみと呟きながら手を動かしていく。