いつも髪は、伸びた分だけ切ってもらってた。
馴染みの美容室で、僕の事を良く知ってくれている美容師さんに。


勇気を出して予約をしていつものように案内された一番奥の落ち着く席。




「千秋くん、今日もいつも通りでいいかな?」




準備を着々と進めながら美容師の真田さん。
僕は用意してきたメモ書きを見せた。




「ん?・・・全体的に短くして・・・って、いいの?今まで頑なに顔見えるの嫌がってたのに」




驚いた顔の真田さんに、僕は頷いて見せる。
僕は決めたんだ。
前を向くって。

しぃちゃんや、榎並さんたちの事を少しだけ信じてみるって。
信じることは怖いけど。

あの人たちの優しさは信じられるって思ったから。




「そっか。俺は嬉しいよ。千秋くんがそんな風に変わってくれて」




本当はわかってる。
僕の周りには、いい人もたくさんいるって。
でも今まで、ずっと見ようとしてこなかった。