可哀想な人。
人を本当に愛することを知らない。
人を愛することがこんなに素晴らしいものだって知らない。
人を愛することでこんなにも強くなれるって知らない。
「僕も、君はいらない」
だから。
「さよならだよ」
君の事は許せない。
でも、憎しみだけにこの心を支配させたくはない。
僕の心は、しぃちゃんを愛するために在るのだから。
僕の声は、しぃちゃんに囁くための音だから。
去っていく皐月ちゃんの姿をすぐに視界から消し去り、僕は柊二くんたちを振り返る。
「すっかり、男の顔になりやがって」
柊二くんは、嬉しそうにそう言って笑った。


