千秋くんは、あの日から何度話しかけてもあまり反応をしてくれなくて。
反応が返ってきたとしても、小さな頷き程度。

亜衣も、柊二くんも話しかけてくれているけど同じ反応。


柊二くんは見るからにイラついているし。
でも、原因を目の当たりにして知っているから、千秋くんにあたったりなんてことはしないけれど。



当の皐月ちゃんというと、あれ以来姿を見せることはなくて今のところホッとしている。



皐月ちゃんが考えていることは、少しも理解することなんてできない。
ただ、少女マンガの主人公に憧れただけ。
それにたまたまはまった千秋くんが犠牲になった。



仕方ない。
なんて済ませられることじゃない。




こんな千秋くん、見たくないよ。




クラスメイトも、最近変わり始めていた千秋くんが元の千秋くんに戻ってしまったことに戸惑っていろいろと噂が立っている。
あまりに噂話が酷い時には、柊二くんが蹴散らしてくれているけど。



「ね、千秋くん。今度・・・」




明るく話を切り出した私に、千秋くんはすっと私が以前渡した水玉模様のノート。
喋れるようになってからは使う事もなくなっていたノート。