「え?どうしたの?なんで泣いて・・・」



伊永さんも千秋くんの視線の先を追うように私を見て驚いたように声をあげた。
その言葉に、自分が泣いていることに気が付いた。


なんで・・・。



馬鹿みたい。
ただ二人でパン屋に行けなくなったくらいで泣くなんて。




「ごめ・・・、なんでもない。なんでもないから、ごめん。帰るね」




そんな私見られたくなくて、慌てて涙を拭うとそう言って走り出した。
恥ずかしい、こんな私。


子どもみたいだ。



「しぃちゃん!」



千秋くんの声を背中に聞きながら、がむしゃらに走った。



もう嫌だ。
うまくいかない。



浮かんだり沈んだり自分の感情が制御できない。




こんなにも、こんなにも、私、千秋くんの事好きになってた。